2006年01月15日

連想

お題:香り


      好きじゃないんだ、この香りは

      あの時の悲しい記憶を

      思い出すから・・・・・・



大樹(七歳)は先を急いでいた。

親友のカッちゃんが新作のゲームを入手したため、

彼の家で一緒にプレイする事に決めたのである。

大樹は一刻も早くゲームをやりたくて、

信号を待っているのももどかしくソワソワと足を踏みならす。

青になるなり書けだした彼だが、

あまりに急ぎすぎたため足をもつれさせバランスを崩してしまった。

地面が顔前に迫る。

ぶつけた鼻が熱を帯び、視界が曇る。

遠くで女の人の声が聞こえた。


「あらあら僕、大丈夫?」


滲んだ涙を慌てて拭い顔を上げると、

女の人が一人、心配そうにこちらに近づいてきた。



「ずいぶんと派手に転んだわねぇ。

 だけど良く泣かなかったね。流石男の子!」


そう言って、女の人は大樹の前にかがみ込んだ。

消毒液の香りが鼻をくすぐる。

瞬間、大樹の頭は真っ白になった。

過去の記憶が甦る。




 あわただしく人が動き回る中、大樹は呆然と立ちつくしていた。

血だらけの父親がストレッチャーに乗せられ運ばれていく。

激しく泣き叫ぶ母親に抱きすくめられながら、

大樹は身を固くしていた。

目の前で繰り広げられる光景が嘘っぽかった。

今、自分が立っているのかどうかも分からない。

夢の中で一連の流れを上から眺めているようだった。

ただただ怖かった。



 大樹は女の人を突き飛ばした。

女の人の小さな悲鳴を後ろに聞きながら、大樹は走り出した。

無我夢中で走る事で記憶を追い払おうとした。

それに意識を取られていたため、

大樹は近づいてくる車に気が付かなかった。

小さな体が道路に飛び出す前に、

追いついた影がしっかりと手を掴み引き戻す。



「いけない子だね。

 道路を渡るときには左右確認。

 ちゃんと学校で習ったでしょう?」


ちゃんと守ってお姉さんを休ませてくれなくちゃ困るぞと、

女の人は大樹の鼻をつまんで悲しげに笑った。



posted by 霧沢美咲 at 11:12| Comment(2) | TrackBack(0) | お題ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
明けました、おめでとう御座いますー。
新年の挨拶遅くなりまくりですよ、すいません。

お父さん、どうしちゃったんですか?女の人誰?
続編とかあると嬉しいです。お父さん云々の話が気になりますー。血まみれ大好きなんでVv(死)

でわー今年もよろしくですー
また荒らしに(訂正;遊びに)来ますのでVv
Posted by 紗椰 at 2006年01月19日 21:32
あけましておめでとう御座いますです。
こちらこそ、中々お伺い出来なくてすみません><

えーと、この大樹君のお父さんは 昔
事故に遭ってなくなっちゃってるんですよ。
女の人の体から香る消毒液の臭い(女の人は看護婦さんなので)をかいだ事で
その時の記憶、病院で慌ただしく父が運ばれていく光景を思い出しちゃった訳です。
わかりにくかったですよね・・・。
友達にも見せたら、分かりにくいって言われちゃいました^^;
Posted by 美咲〜 紗椰さんへ at 2006年01月20日 16:12
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