2005年08月06日

ありのままで




     何も出来ない自分が。情けない自分が。
 
      悔しくて、腹立たしくて仕方がなかった・・・。


    ___________________________________________________


     魔法の世界。

      あらゆるところに魔法が満ちている世界。


       そんな世界に住んでいる魔法の住民達。

        誰もが魔法を駆使し毎日の生活に役立てている。


      そんな中、魔法が使えずにいる一人の少年がいた。



            これはその少年の物語。













ありのままで






「お前だけだぜ、こんな簡単な魔法すら使えない奴は!」



意地悪げな声が一人の少年に浴びせられる。



「見ろよ、お前より小さいサラにだって使えるんだぜ!」



「ちょっと、止めなよお兄ちゃん!」


初めのささ笑うようなその声は、兄。

それを咎めた声は、妹。


そして妹は少年に向き直り、優しげな口調で囁いた。



「気にする事ないわよ。

 人にはそれぞれ向き不向きがあるんだから。」


「魔法が使えない奴が、魔法の住民を名乗れるのかよ!」


それを聞いた兄が鼻を鳴らし、またもやつっかかる。


「今に使えるようになるわよ。」


「今にっていつだよ!俺達が死ぬ頃か!?」


今まで散々練習してそれでもなお使えずにいる奴が、

いつ使えるようになるって言うんだ。

それが、兄の言い分だ。



「・・・今によ!」


頭を振って、妹はなお首を横に振る。

目にはうっすら涙がにじんでいた。

兄弟が喧嘩ばかりしているのが、妹である彼女にはとても辛い事だった。

サラは、気立てがよく

いつも優しい笑顔を絶やさない少女だった。

皆仲良くいられる事が、彼女にとって最高の幸せだった。


長男である、タギという少年もまた

彼女のその気持ちは痛いほど分かっていた。

だが、気づいていながらも

中々魔法も成長をみせない弟に

苛立ちを感じずにはいられないのだ。



魔法の住民は、それこそ 生まれて物心つくまでに

魔法が使えるのが普通なのである。

いつまで経っても使えるようにならないサキは

今や村中の超有名問題児になりあがっている。


大人達は、明らかに目に軽蔑の色を浮かべているし

遠慮をしらない同じ年頃の子供達は

口にだしてからかっている。



村の中でも優秀な魔法の使い手であるタギにとって

それが我慢ならないのだ。




「お兄ちゃんだって、魔法の国の住民だもの。使えないはずないわ!」


「そもそも、その魔法の国の住民って事すら怪しいんじゃないのか!」


「・・・!!何て事を言うのよっ!?」



そんな二人の会話を聞きながら、

その会話の当事者である少年は無言で背を向けた。



「・・・あ。」



妹が気づき顔を上げた頃には、彼はドアの向こうに姿を消していた。




(・・・いつもの事さ。もう、慣れた。)



ぼそっ、と心の中でそう呟きサキ(十五歳)は溜息をついた。



(嘘だ。本当はかなり気にしているくせに・・・!)



浮かび上がってくるもう一つの心のうちに、

ぎりっ、と歯を食いしばる。



(サラも、俺に構う事なんかないんだ・・・。

 むしろ、悲しくなるだけなんだから・・・!)



ただのやつあたりとしか言いようのない自分の言葉に、顔を曇らせる。

こんなんだから魔法が使えなんじゃないか、とそう肩を落とす。



「こうなったら、やっぱり行くっきゃないか。」



以前から考えていた秘策を、

そろそろ試してみるべきかもしれない。


そう思い、沙希は足を踏み出した。

向かう先は『魔法の洞窟』


いかにもまんまなネーミング。

が、一番しっくりくる名でもある。


そう、分かりやすいって事が一番なのかもしれない。



その洞窟は人里に触れない山奥にある。

そんな神聖な空気で満ちたそんな中にその洞窟は口をあけている。



その奥から流れてくる『気』

その気が、この世界に魔法の力を持たせているのだ。



空を自由に飛びまわれる力を持った絨毯。

真実を映し出す鏡。

履くと何故か心が軽くなり、ステップを踏みたくなる靴。



すべてのものを普通でなくならせるそんな力の源が、

その洞窟の奥に潜んでいる。



(その源に近づけば、

 自分にも魔法が使える様になるかもしれない。)



それが沙希の考えた寸法だった。

単純極まりない答え。下手な詮索は必要ない。




そうこう考えているうちに、沙希は例の洞窟に辿りついていた。



「問題は、どうやってあの洞窟に入るかだよなぁ〜・・・。」



当然と言うべきか、

洞窟の前には見張りらしき人物が二人立っていた。


見張りがいるかもしれない、って事は予測済みだった。

けど、いろいろ作戦を練ったりするのはどうも苦手だ。

頭が痛くなるから。



『とにかくその場その場で当たって砕けろ!』



そんな感じにぐらいにしか考えていなかった。

このへんが子供(ガキ)なんだって話。



けど、その見張りの様子が可笑しかった。

普通なら緊張して辺りに気を配っていなければならないのに、

のんびりとあくびなんぞを浮かべ談笑にふけっている。

見張りも何もあったもんじゃない。



(・・・ラッキィ〜vこれなら俺にも出し抜けるかもv)



不適な笑みを浮かべ、サキはすっと息を吸い込んだ。



「うわあああああああああああっ!!」



これでもかっ、ってぐらい大声を張り上げて

サキは彼らの前に踊りでる。


いきなり現れた子供に、

見張りの二人は何だ何だと顔を見合わせる。



「坊主、こんなところで何してるんだ!?」


「こんなところに来ちゃ駄目じゃないか!!」


見張りの男達が口々にまくし立てる。

その内の一人がサキを捕まえようとするものだから

慌てて避けてサキは言った。



「それどころじゃないんだよ!!

 あっちの方で女の子が襲われてるんだ!!」



「何だって!?そりゃ大変だ!!」


彼らは顔を真剣な表情に変え、僕に道を尋ねる。



「ここから500メートル離れたところにある

 大きな木が目印だよ!早く早く!!

 そんな呑気にしてる場合じゃないよおじさん!

 女の子が食べられちゃうってば!」



・・・大嘘である。


だが僕の名演技を彼らは疑う事無く、

いるはずのない女の子と大熊のもとへと走り出していった。

彼らの姿が森の奥深く消えた事を確認し、

サキはしてやったりと満足げな笑みを浮かべ

目の前の閉ざされた扉を見上げた。




大きな扉である。

いや、鉄格子と言った方が正しい。

棒と棒の間から奥深くから流れてくる気。

それを身で感じ取りながらサキはごくりと息を飲んだ。



いよいよだ。




まず沙希は扉を開けようと試みた。

簡単な事だ。ただ押しただけ。


今まで誰もが試してきた行動。

そして決して空く事はなかった扉。


・・・そのはずだったのだが。



「・・・え。えええええええっ!?」



どういう事だろう。

いとも簡単に扉は空いてしまった。

思わぬ事態にサキは口をパクパクする始末である。


それでも。

もたもたしてるとあの見張りの奴らが戻ってきてしまう!

そんな思いから沙希はゆっくりと扉の奥へ足を踏み入れ、

元通りに閉ざして歩き出した。

今度もいとも沙希の後ろで簡単に扉は閉まった。




どのくらい歩いたろう。

外から差し込んでいた光も届かなくなりしばらく暗闇が続いた。


道は一本道なのでこうして壁伝いに進んでいけば迷う事はない。

それに、足を進めるごとに気がサキの体を強く撫でていく。

目的地が近い事が分かればいく分の疲れも吹き飛んでしまう。

何より、今まで誰も知りえなかった扉の奥の謎が

今、明かされようとしているのだ。

これほどの胸を掻き立てるものがあるだろうか!


さっきから、胸の高鳴りが強くなってきている。

喉ももうからからだ。



「あ!!」



サキは叫んだ。


彼の目の前に広がった光景とは。



入り組んだ先は池溜になっていた。

天井には微かな穴が空いており

そこから外の日差しが舞い降りている。

その光を浴び淡く色づいた水が滝となって

岩の合間から流れ落ちていく。


それは決して五月蠅くなくさわさわと落ち着いた音色を奏でていた。


苛立ちや不快感、

そんな負の感情を忘れさせてくれるように

サキは何だか穏やかな気分でその光景に見入っていた。



洞窟の奥がこんな風になっていたなんて・・・!!

誰も知らない。

僕だけの秘密の場所!!



魔力が使えるようになる事が目的だったが、

そんな事はもうどうでも良くなっっていた。


いや、そうじゃない。

ふと、サキはある事に思い当たった。

自分は魔力が人一倍弱い。

だからこそ、ここにたどりつけたのではないか?

そんな思いがサキの胸をよぎった。


考えられないわけではない。

今まで散々自分が嫌で嫌で仕方なかった。

けど、それはもう今日限り。



サキは時間を忘れてずっとその音色に耳を傾けていた。


 





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posted by 霧沢美咲 at 06:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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