2005年08月10日

心の中にあるもの

お題:傷つくたびに人は強く、優しくなれる





忘れないで。

いつまでも、その気持ちを持ち続けて…




(お題は てっちゃんさんが
 提供して下さいました〜♪ありがとう御座います☆)





思いつくままに書いてたら
物凄く長くなっちゃいました…^^;

あらかじめ、覚悟の上でお読みになって下さい><




心の中にあるもの




『大キライ。』


小さな方を震わせて、目の前の少女はそう言った。


「…そう。」


女は静かに頷いて少女の体を抱きしめてやった。


「そうだね。ユリちゃんも、あっくんも、たーくんも、
 皆 自分勝手だよね。
 カナだけが悪いんじゃないのに…。」


女の腕の中で、少女は わっ と泣き出した。


「痛かったよね。」


少女の赤くなった頬にそっと触れて、女は悲し気な瞳を向ける。


『どうして…っ、どうしてカナがたたかれなくちゃいけないの…?
 ねぇ…、どうしてカナが怒鳴られなくちゃいけないの…?
 どうして…っ、どうして皆はカナを…、カナをいじめるの…っ!?』


少女は女の腕の中でわんわん泣いた。

しゃくりあげる嗚咽で声をかすれさせつつも、少女は泣き続けた。

しばらくの間、女はそんな少女の姿を黙って見つめ、抱きしめる手に力を込めた。


__________________________________________ __ ___



 ユリちゃん、あっくん、たーくん、そしてカナは

幼馴染の仲良し四人組だった。

小さい頃からずっと、何をするにも4人で遊んできた。

だが、4人が小学高学年に入る頃になって、

ユリちゃんがカナに冷たく当たるようになったのだ。

カナがあっくんと喋ると間に割って入って邪魔をするようになった。

初めはちょっとしたものだったが、

だんだんとあからさまに、はっきりとした態度に出始めた。

カナには、どうしてユリちゃんがそんな事をするのか分からなかった。



 ある日の事、

カナが学校に宿題のプリントを忘れて来てしまった事があった。

これが今回の事件の始まりだった。

カナは人一倍怖がりで、とても一人では

夜の学校にプリントを取りに行く事が出来そうになかった。

だから、あっくんに一緒について来て貰えるよう頼んだ。

ほかの二人は出掛けているらしかったから。


そして、プリントを取りに行った帰り際、

不定期に点滅する街頭の下、

バサバサッと羽音をたてて飛び立った黒い影に驚いて、

カナはあっくんに抱きついてしまった。


そこに、ちょうど一緒になったらしい

塾帰りのユリちゃんと、買い物帰りのたーくん二人が居合わせたのだ。


「…何してるの?」


静かな冷え冷えとした声が、ユリちゃんの口から発せられる。

俯き加減で額に影を落とす前髪の間から、

ギラギラと怒りをあらわにした視線がカナに向けられていた。

そのあまりの鋭さにカナが言葉を失っていると、

ツカツカと歩み寄ってきたユリちゃんが勢いよくカナの頬を引っぱたいた。


____バチーン


「!?」

何するの!?と見上げたユリちゃんの瞳には涙が浮かんでいた。

苦し気に顔を歪ませて叫ぶ。


「カナなんて大キライよ!!」


そう言ってユリちゃんは手を振り上げる。
それから逃げるように、カナは身をかがめた。


「止めろよっ!!」


かばうようにしてたーくんがカナの前に立ち、
ユリちゃんの振り上げた手首を掴んだ。


「くっ…!!」


ユリちゃんは怯んだように一歩後ずさる。


「…たーくんっ。」


目の前の彼の服をカナが掴むと、

たーくんはくるっと顔をこっちに向けて怒鳴った。


「話しかけるな…っ!!お前なんか…お前なんか…大キライだっ!!」


浴びせられる罵声。

無邪気に笑ういつもの面影はもうどこにもなかった。


「皆っ、喧嘩は良くない…っ!!」


険悪なムードになった場に、あっくんが慌てて間に割って入る。


「うるさい…っ!!」


その手を払いのけて、たーくんは歯の隙間から声を絞り出す。


「だいたいっ、俺は…お前もっ…お前も気に入らなかったんだ…っ!!」


「…っ!!」


親友に突き放されて、あっくんは言葉を失った。




もう滅茶苦茶になってしまった。

昔のように、4人仲良く遊べなくなってしまった。


「どうして…。どうしてこんな事になっちゃうんだよ…。」


「あっくん…。」


悔し気に呟くあっくんに、同意を示すようにカナは彼の名前を呼んだ。


「……。」


チラッとこちらに視線を寄越したと思ったのもつかの間、

あっくんはフイッとカナから顔を背けてしまった。

時折、カナの方を見て心配するそぶりを見せるものの、

どこか話しかけられるのを拒んでいるようだった。



カナは わっ と泣き出して、一人その場から立ち去った。

今から1時間程までの出来事である。



__________________________________________ __ ___



少女が泣き止むまで、女は無言のまま少女を抱きしめていた。

そして、少女の鼻をすする音だけが静寂に響くようになってから、

女は少女の顔に手をやり、優しく上を向かせた。

二人はお互いに見つめ合う形になる。

自分を見上げてくる大きな瞳を見つめながら、女は少女に囁いた。


「カナはもう皆が大キライだよね。
 何もかもカナの所為にして…、自分勝手な事ばかり言って…。
 許せないよね。もう二度と口も聞いてやらない。
 ふふっ、清清するよね。ね?」


女の目は、瞳の奥深くまで見透かすようにまっすぐ少女に向けられている。


『カナ、ユリちゃんもあっくんもたーくんも…皆っ…』


少女はそこまで言って、声を詰まらせた。

唇をギュッと噛み締め、大きく見開いた目からポロポロと涙がこぼれる。

女はそんな少女の様子を眺めやり、髪に優しく触れ先を促してやる。


『皆っ…』


少女は、スカートの裾を掴んでブンブンと首を横に振る。


『いやだよ。カナ、いえないよ…。』


そう言って少女は俯く。


『カナ、怒ってなんかないよ。皆の事、キライじゃないよ…。』


「……。」

女は黙ったまま、少女の言葉に聞き入っていた。


『カナ、皆に[大キライ]って言われたとき、凄く悲しかったの…。
 このへんがね、ギュウッて締め付けられるように苦しくなったの…。
 カナも大キライって言っちゃったら楽になれると思ったけど…
 やっぱりだめだよ…。余計苦しくなっちゃった…。』


ふっ と女は表情を和らげて言った。


「痛かったのは叩かれた頬じゃなくて、心の方だったんだよね。」


『? カナ、ほっぺた痛かったよ…?』


目を瞬かせる少女に、女は苦笑しながら続けた。


「大丈夫だよ。その気持ちを知っているカナなら、皆分かってくれる。
 その優しさは皆に伝わるはずだよ。」


女はにっこり笑った。


「きっと、また昔みたいに仲良く遊べる、元の関係に戻れるわ。」


『ほんとう?』


「ええ。だから忘れないで。いつまでも その気持ちを持ち続けて。」


『うんっ!!』


満面の笑顔を浮かべて少女は彼らの下へと走っていった。

女はその少女の姿が遠く彼方に消えるまで、静かに見守っていた。



______________________________________ __ ___



「加奈、どしたの?ボーッとしてぇ。」


ポンポンと肩を叩かれて、加奈は我に返った。


「…んーん、何でもないよ。」


頭の隅におぼろげに揺れる幻想を意識しながら

加奈は首を横に振り、傍にいる三人に笑って見せた。


「加奈の事だ。まぁ〜た、立ったまま夢でも見てたんだろ。」


一人がそう言って、ケタケタと無邪気に笑った。

その隣で、もう一人も可笑しそうに笑った。


「立ち寝は加奈ちゃんの十八番だからね。」


「ほーんと、入学式の時にも列の先頭で寝ちゃうんだから!
 ど〜ゆ〜神経してるんだか。」


先程、加奈を覗き込んできた一人も呆れたように苦笑を浮かべている。



「すっ、好きで寝てるんじゃないよぉ〜〜。
 あの時は、疲れきっててっ…!
 だって、前日の夜、全然眠れなかったんだもの!


真っ赤になって抗議すると、三人は口々にこういった。


「まっ、見てて飽きないけど。」

「そうそう、楽しいよね。」

「あんたはそれで良いの。」


えへへっ、と照れたように笑いつつ 加奈は拗ねたように呟いた。


「もぅ!人を玩具みたいに言って〜!酷いなぁ〜。」





加奈は笑っている。皆も笑っている。     あの頃のように。







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posted by 霧沢美咲 at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | お題ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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