2005年08月23日

紫水晶 第二章_変貌3

■前回のあらすじ  読み直して見る?


 

 過去を引きずって人と触れ合う事を強く拒み続けている揚羽


 もう、誰も信じない。

 離婚した母親も。

 散々私をからかう友達も。

 裏切られるのなら・・・

 独りでいる方がずっと良い・・・!!
苦難は続く。

私の一番の心の傷は、強盗に巻き込まれた事だ。

あれは、私が五歳の頃だっただろうか。

母親と銀行にお金を卸しに行った時の事だ。

その銀行に強盗が入った。

ニット帽を目深にかぶり、サングラスをかけ、マスクをつけているといった

本などで見た事のあるまさにその通りのなりの強盗犯だった。

ただ、身体がひょろひょろに痩せていて、

全体的に自分のしている事に怯えを感じているのか

弱弱しい印象を感じさせた。

強盗犯の手には刃物が握られており、振るえる刃先を空中に漂わせていた。

それを見て取った店員の一人が、宥めるように、


「馬鹿な真似はよせ。」


と足を踏み出したが、強盗犯は激しく首を横に振り、拒否反応を示した。

そしてふと彼が顔を上げたとき、

彼の目と

恐怖に締め付けられるような思いで彼を見詰めていた私との目が合った。

二人の間に、緊張が走った。

私は急いでその場から離れようとしたが、男の動きは素早かった。

突き出されたその手はしっかりと、私の腕を掴んでいた。

そして私の腕を締め上げ、

逃げ出さないように力を込めながら私の喉元に刃物を突きつけた。

緊張が張り詰める。緊張が張り詰める。

お互いが探り合い、機会を窺っていた。

思い出すだけでも、すごく苦しい。

喉に触れる刃物の冷たさと、

強盗犯の手が震える度に刃が喉に食い込み滲み出た血の熱さを、

私は今でもはっきりと覚えている。

耳元にかかった強盗犯の荒い呼吸の一つ一つも。

 私の喉元には、その時に出来た傷跡がうっすらと残っているが、

それに目をやる度に、あるいは他人に目をやられる度に、

事件の光景を生々しく思い出し悩まされる日々だ。

結局、その強盗犯は警察の活躍により逮捕され、

私も無事保護された。

その強盗犯は借金に苦しんでいたらしく、

そんな生活に耐え切れなくなって犯行に及んだと自白したらしい。

が、その事件は私の人間不信に拍車をかけた。

もう誰も信じられない。

こうも簡単に人を傷つけるものばかりだとは思わなかった。

だったら、一人でいる方がずっと楽だ。

二度と、あんな思いはしたくない。







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posted by 霧沢美咲 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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