2005年08月26日

紫水晶 第三章_悲劇の幕開け

■前回のあらすじ  読み直して見る?


 私は目の前の光景を信じる事が出来なかった。


 私に集まる視線、視線、視線・・・。

 そこには、異常なまでの私に対する執着心が感じられた。


 突然の出来事に、揚羽は呆然と立ち尽くす。


 恐怖のあまり動けずに涙を流すしかなかった彼女の目に、

 見覚えのある姿が飛び込んできた。 



第三章 悲劇の幕開け




俺の名前は杉原結城。

(十五)東森中学校の副会長なんぞをやっている。

生徒会長は、今俺の隣を歩いている片桐竜也(十五)である。

竜也とは幼稚園からの腐れ縁で、

よく馬が合うのでずっと仲のいい付き合いをしている。

ちょっと堅苦しいところもあるにはあるが、それはそれで、彼はいい奴だ。

生徒会の仕事も皆の期待を裏切らず、

立派にこなしきってしまう頼れる存在だ。

俺も、負けていられないな。

また、俺達はこの生徒会以外にもはまり込んでいるものがある。

それは・・・・・。


君は精霊というものを信じるかい?

魔法と言うものが存在すると思うかい?

俺達は実は、その精霊とか魔法とか言ったものに興味があるんだ。

竜也がまだ小さい頃に飛行機事故に遭って、そこで精霊を見たと言うんだ。

それは人型で透き通った体をした男の人だったらしい。

その時竜也が見たその人は、

本当に精霊と呼ばれるものなのかどうかは分からないが、

俺はその話にすごく興味を引かれた。

もともと竜也は冗談をあまり言わない奴だったし、

竜也が話していた時の目は真剣そのものだった。

それに、俺自身世の中に起こっている事は不思議に満ちていて、

そういったものの存在をすんなりと受け入れられた。

この話は俺達二人の間でしか話していない。

別に隠すような事でもないが、

このような事を信じている人はかなり少ないような気がする。

近所の幼稚園児の中にもサンタの存在を否定している子が何人もいるし、

まだ信じている子の中でも他者に否定されて

信じる気持ちが薄れていってしまっているのではないだろうか。

それを思うと、このまま黙っている方がもしかしたらいいのかもしれない。

あんまり気持ちのいいものじゃないけどね。


 それはさておき、

今俺の手には最新のデザインのサングラスが握られている。

俺達がずっと前から欲しかったサングラスだ。

大好きなマラソンランナーのつけている有名なサングラス。

だいぶ前から目をつけ、根気強く交渉を続け、

そしてやっと俺達の小遣いで買えるようになり急いで購入したのだ。


「竜也。聞いてくれよ。ついにこれ、手に入ったんだ!」


サングラスを差し出した俺に、竜也は


「凄いじゃん!うわ・・・本当に何もかも一緒だ!」


と珍しく声を張り上げながらうれしそうに笑った。

彼は感激のあまり目をきらきらと輝かせ、

まじまじとサングラスに見入っていたが、

すぐに顔を上げてすまなそうな顔で俺を見る。


「これ手に入れるの、大変だったろ?」


聞いてくる竜也にどうって事ないよ、

と手を振りながら俺はサングラスをかけポーズを決めてみる。


「どう?似合うか?」


竜也は、おおっ、と感嘆の声を上げた。そして親指を立てる。


―グッ。


やりぃ、と指を鳴らして俺は竜也に尋ねる。


「竜也もかけてみなよ。きっと似合うと思うよ。」


俺のこの言葉に、彼は少し考え込んだかと思うと


「いや、もうすぐ学校に着くし・・・、皆に見られたら面倒だろう。

言い訳とかさ。」


と、肩をすくめた。あいかわらず、生真面目な奴だ。


「・・・かなり根性入れて頑張ったのになぁ、これ手に入れるの。」


ちょっとすねたように投げやりな声を上げると、

竜也は、さっきといってる事が違うぞとつっ込みながらも

サングラスに視線を落とした。


「なのに毎日つけてくれないんだー?

あの人もきっと、残念がるだろうになぁ。」


更にわざとらしく溜息をついてみせると竜也はあっさりと、

そうだな、と頷きサングラスをかけた。

案外、本当はずっとつけたくてそわそわしていたのかもしれない。


「今度、生徒会でこういうのも許可してもらえるよう交渉してみるか?」


そう言う彼に少し驚きながら


「かなりの難問になるよ、これは。

生徒たちは応援してくれるかも知れないけど、

先生とか大反対してくるだろうしさ。それを押し切るのは・・・。」


と言って見せたが、本当は俺も結構乗り気だった。

難しいほど自分たちの力の見せ所で、やる気も出る。

それに何より竜也がそう言ってくれた事、

彼がやろうとして出来なかった事は無い。

顔を上げ、俺達は頷く。そして、にっと笑う。


「でも、それが出来れば最高だよな。」


「ああ。こうなったらとことん粘って絶対許可取ってやろうぜ。」


お互い、両方の握りこぶしを交差させ掛け声とともに振り下ろし、

気合を入れる。




そうこうしているうちに、俺達はもう学校の近くまで来ていた。

そこで俺達は奇妙なものを目撃する事になる。

たくさんの人だかりが、ある一点に集まっているのだ。


「何だよ、これ?」

そのあまりの人の多さに、俺は呆然と呟いてしまった。

竜也を振り返ってみると、

彼も訳が分からないといった様子でお互いに顔を見合わせていた。

が、すぐに怒ったように呟いた。


「通行の邪魔になってるじゃないか。」


そう言って、彼はその人ごみを何とかしようと、

その中へと足を踏み入れていった。

その間に俺はこの人だかりの中心にあるものを見ようと、

校門の上に登った。ここからはその様子がよく分かった。

人だかりの中心にいたのは、俺達の中学校の生徒だった。

私服のポケットに一年生用の校章のバッチがつけられていた。

髪を肩の高さで切り揃えた少女。

彼女の纏う独特の雰囲気は人を拒絶するかのように、暗い闇を感じさせる。

彼女は目の前の人だかりを怯えるように見つめていた。

サングラスをかけていたせいもあり、少し見にくくさを感じた俺は、

サングラスを取りもっとよく彼女を見ようとした。

そして、サングラスに手をかけ取り去ろうとしたその時、

竜也の


「何の騒ぎだ?」


と皆に問いただす声が耳に入り、その動きは中断された。

俺は竜也に今見た状況を伝えてやる。


「何か、うちの学校の一年の女子の周りに人が集まってるみたいだぜ?

何だか、様子が変だ。」


彼女の周りの奴等は、動きが可笑しかった。

その俺の言葉に、竜也も


「・・・みたい、だな。どうなってるんだ?」


と、呆然と呟いた。

そんな彼に、ちょっと待ってろと手で押しとどめながら、

俺は再びサングラスに手をかけた。

そして、目の前に何の妨げもなくなった俺の目に、

その女生徒の目が飛び込んできた。

途端に、頭の中がぼんやりとしてくるのが分かった。

どうしたんだろうと感じる事さえも出来ずに、

俺の周りの景色が遠のいていった。

ただ一人、その女性とを除いて。

彼女の薄く紫がかった瞳を見ているうちに、

俺の体の中から何か熱いものが込み上げてくる。

なんともいえない高揚感が俺を包んでいった。

そして、俺は意識をなくしていった。






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posted by 霧沢美咲 at 17:49| Comment(6) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
続ききになりますー!
Posted by say at 2005年08月26日 18:54
このお話の最初からここまで、まとめて読ませていただきました(話に浸るのが好きなので)。
美咲さんの文章には違和感がなくて、すんなり浸れて楽しいです。
どっぷり浸りで、話の謎がとっても気になって気になって・・・(´;ェ;`)ウゥ・・・。

続き楽しみにしてます〜♪
Posted by まこティ at 2005年08月26日 21:10
読みやすいストーリーですんなり読めていいですよ☆
まぁ、普段は小説読まない人間なんで気にしないで下さい。昔は良く読んでいたんだけどなぁ〜…。
ファンタジーとかスペースオペラしか読んで無かった気がする(TχT)
Posted by てっちゃん at 2005年08月26日 23:05
どんどん、続きをUPしていきますよー♪

お楽しみに☆
Posted by 美咲〜sayさんへ at 2005年08月27日 15:01
まぁ!一気に読んじゃいましたか!
違和感なく、すんなり読めるというのは嬉しかったです♪
途中、「ん??」と?が浮かんじゃうと
一旦、集中がきれちゃいますものね(汗)
ああ、良かったぁ〜(*^。^*)

このまま、最後までどっぷり浸ったまま
いけるかな?(ドキドキ・・・)

どんどん続きをUPしますね☆
お楽しみに(σ`・ω・)σ♪
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年08月27日 15:04

毎回、感想どうもありがとう御座います♪
励みになります〜(*^。^*)

私も、最近めっきり小説読む機会が減ったなぁ・・・。
あ、でも昨日友達に薦められた本を読んで
すっごく面白い本があったんです!
お気に入りがまた一つ増えちゃいました〜♪

今後も、楽しんで読んで貰えると嬉しいです!
どうぞ、よろしくお願い致します(σ`・ω・)σ♪
Posted by 美咲〜てっちゃんさんへ at 2005年08月27日 15:07
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