2005年09月01日

紫水晶 第四章_思い出の日3

■前回のあらすじ  読み直して見る?

 少女はどこにいるのか、全く検討がつかない。

 とりあえず、人気のないところ全てを当たってみよう。

 そう、走り出そうとする竜也と結城に

 優也が口にする。

 『揚羽さんは「精進の社」にいると思う。』

 何故、そんな事が分かるのか?

 だが、確信を帯びた優也の勘を信じてみるのも良いかもしれない。

 三人は、精進の社に向かって歩き出した。


私は今、精進の社≠フ前に立っていた。

とにかく今は人に会いたくなかった。

そう考えていたらここに来てしまっていた。

長い間、人の目に触れる事のなかったこの神社は、

もはや限界ぎりぎりにまで潰れかかっていた。

老朽化したお堂は静寂の中ギシギシとその体をきしませているし、

伸び放題の草木もゆっくりと、だが確実にその数を増やしている。

そのまた奥では、小さな池が不気味な静けさを漂わせていた。

私がここに来るのは初めての事で、

目の前に広がる光景を少しの間呆然と見詰めながら、

私はふと辺りを見渡した。

もしかしたら物好きな人もいて、ここに立ち入っているかもしれない。

だが、そんな気配は見られなかった。

その事に少なからず安心し、私はお堂の方へと向き直った。


(しばらくあそこにいようか・・・。でも、いつまで・・・?)


疲れ切った体で考える。

私が皆を可笑しくしている。副会長もそうだ。

彼の変貌を目にして、はっきりと分かった。

あの時の光景が再びまざまざと思い起こされる。

この神社に向かっている時は深く考えずにいられたが、

ここでは、こんな何の邪魔も入らない様な場所では

考えたくもない事まで次々に浮かび上がってくる。

私は顔をしかめ、首を横に振った。


(何で・・・どうして・・・一体何が起こっているの?

私、一体どうしちゃったって言うの!?)


何度も自分に問いかけた言葉。

だが、答えなど見つからない。分からない・・。


「痛・・・!」


頭を抱え込んでうずくまると同時に、

手の甲に鋭い痛みを感じて私は思わず呻いてしまった。

手の甲に目をやると、まっすぐに伸びる傷跡にうっすらと血が滲んでいた。

私の周りには薄くとがった葉がたくさん生えている。

どうやら、それで切ったようだ。

その傷跡をぼんやりと眺めながら、私はふと思った。


(このまま・・・、このまま

この傷口から体中の血が全部流れ出て死んでいくのもいいかもな・・・。)


また、今までの生活に戻ったとしても、

多分、あの状況は変わったりはしないのだろう。

またあの時の様に・・・私の居場所は、無い・・・。

ふと、向こうに見える池に視線がうつる。

ふらつく足取りで、私はゆっくりと池に近づきそれを覗き込む。

池には魚が一匹も見られなかった。

そして淀んだ池の奥に、底を見る事は出来なかった。

極めつけは、近くにある大きな岩のような石。


「・・・・・。」

まるで誘われているかのように、私はその石を手に取った。

ずっしりと重く冷たい感覚を伝わらせてくるその石の感触に、

恐怖を感じ少し戸惑ったが、すぐに思い直して池の前に立った。

一歩、池の中に足を踏み入れた。

刺すような冷たさだった。

それでも、私は一歩もう一歩と池の中へと足を進めていった。

ちょうど、腰の高さにまで達した時、


「ちょっと、待ってよ!」


慌てた声と、こちらに近づいてくるいくつかの足音。

浮かび上がる三つの影。

生徒会長と副会長。そして幼なじみの葉瀬優也。

三人とも目にはサングラスがかけられていた。

走ってきたのだろうか。

流れる汗もそのままに、息を切らしながら三人は

強張った表情で私のほうを見ていた。

お互いに動けずに居た。

そんな中、葉瀬優也が動いた。

彼は自分の服がずぶ濡れになるのも構わずに、

池の中にいる私のところまでやって来た。

そして驚き固まっている私の前に立って、

彼は厳しい表情で、そしてどこか咎めるような口調で言った。


「こんな物、捨てちゃいなよ。苦しいのは分かるけど、

そんな事、するもんじゃないよ。」


と私の手から石を取り去る。

私は母親に教えてもらうまで何も出来ない、

何も知らない子供のように、されるがままに従っていた。

急な展開に、ついていけなかったのだ。

そうしながら、彼は後ろにいる二人を振り返りながら言う。


「君には助けてくれる人がいるんだよ。

彼らが君の助かる方法を見つけてくれる。

君の様子が可笑しかったから、心配して話を聞きに来てくれたんだ。

大丈夫、皆で考えれば解決策はすぐにみつかると思うよ。」


彼の言葉が、私の頭の中に響き渡った。


(助ける・・・?私を?何の面識もない私を?)


朝、あの時私が思わず泣いてしまったのを生徒会長にみられてしまった。

それで気にかけてくれたというのか。

わざわざこうして捜しに来てくれたというのか。

幼なじみのこの彼も、

こんなに私の事を見ていてくれたなんて全然気がつかなかった。

こんなに近くにありながら、私は見ようとしていなかった。

戸惑いがちに、私は少しだけ上目遣いに彼らを見た。

彼らの目は、真剣そのものだった。

心配してくれていると言う事に、嘘はない。

無言で俯いてしまった私に優也は困ったように、

とにかくここから上がろう、と私の手を引いた。

体に寒気が走った。

このまま池の中にいたら風邪をひいてしまいそうだ。

言われた通りに、私はそれに続こうとした。




sasie1.jpg

 ↑は友達が描いてくれた挿絵です☆ありがとー♪



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posted by 霧沢美咲 at 11:59| Comment(8) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Good!です♪
大きな岩のような石ってあるんですけど、それを疲れ切った体で持ち上げるってのはびっくりです。何か呪いでも石にかかっているのかな?
冒頭に『どれくらいの時間がたったのだろうか?』とかの時間描写入れると僕的にはいいかなって思ったんですけどどうでしょうか?
Posted by てっちゃん at 2005年09月01日 21:30
はっ!?そういやそうですね!
何で私、変だって気がつかなかったんだろう??
大きな岩のような石を持ち上げちゃうなんて(汗)
とにかく、体が浮かび上がらないように重たいものをと思って意識が先走っちゃったんだなぁ・・・きっと。
うーむ、じゃあ岩のようなじゃなく大きめな石に直そうか・・・でも、大きな石でも持ち上げる気力も残ってないほど彼女は疲れきってる状況だし・・・。
うーむ、困った・・・。

時間描写ですか?入れた方が良いかなぁ〜。
でも、そう言われるとあった方が良いような気がしてきました・・・!!
Posted by 美咲〜てっちゃんさんへ at 2005年09月01日 23:04
無事みんなで会えましたね☆-(ノ゚Д゚)八(゚Д゚ )ノイエーイ。
今回は「あれ?」って思うところがありましたので書いておきますね。

@血と石と死のこと。
私の最初の印象は「血を流して死ぬことを考えているときに、ふと池と大きな岩のような石が気になり、石を手に取って(大きいから持ち上げずに触って)、思い直して(石から手を離して)池の中へ(死のうとしてじゃなく、半分操られ状態)。」でした。
あとで石を取り上げられて「あれ?持ってたの?」と。
「血を流して死ぬことを考える⇒死ぬために池に石を持って入る」という部分が私の中で繋がりませんでした。

血を流すなら、傷を深くするor増やすで、池に手を突っ込んで・・・重症になるかしら。
血の部分がなくても、石と池を見て死ぬことを考えてもいいと思いますよ〜。これなら疲れながらも大きい石を持ち上げて・・・おかしくないかも?

A三人ともサングラス
優也はサングラスをかけていなくても変にならない特殊な存在だと思ってました。
「学校前で優也が変にならなかったのは、サングラスしてたから?校則やぶってた?」という疑問が出てきてしまいました。

以上2つです。
「この表現だとこんな感じ方する人がいるのか」くらいの感じで参考にしてもらえればうれしいです♪


最後に変換ミスの発見。
「君の様子が可笑しかったから、心配して話を聞きに着てくれたんだ」
何か着ちゃってます( ´艸`)ムププ♪
Posted by まこティ at 2005年09月02日 09:55
ははぁ〜、そんな風に感じましたか!
すっごく参考になりました!ありがとう御座います♪
じゃあ、@は血の部分は排除しよーっと。
えと、それからAについてで、
「優也君はサングラスをかけていなくても変にならない特殊な存在」だと思ってたとの事なんですが。
おみごと!その通りです!
これについては、もう少し後に皆も気がつくんです。
この子達、気がつくの遅いんです・・・。
何故って、何かいろんな事をいっぺんに描いてしまうと
読んでる人が混乱しかねないなぁ、と思って
ひと段落ついてから「あれ?」と気づくようにしようかと思って・・・。
だけど、どっちにしろ混乱させてしまいましたね^^;
むぅ、難しい・・・><

あ、あと漢字の間違い、教えてくれてありがとう御座います☆
早速直します!

Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月02日 11:03
Aについて、優也君はごまかす為にサングラスしてたんですね。
先走っちゃいました、すみません><

先走りついでに書いちゃおう(ぉぃw

私みたいな感覚だと、このお話の前(神社に向かう道とか)で生徒会長か副会長が気づいて(万能君2人だし)、でも説明は後回し・・・みたいな部分があると混乱しないと思います。揚羽さんだけ後で気付く・・・みたいなのでもいいかな〜?と思いました。

ひと段落ついてから「あれ?」と気づくようにはなりませんが・・・( ´△`)アァ-難しいですね、文章って。

なんとなく〜な感覚で読んで感想を書いてるので、参考程度でみてくださぃね(*´ -`)(´- `*)ネー。

今後のお話、楽しみにしてま〜す♪
Posted by まこティ〜Aについて〜 at 2005年09月02日 13:49
そうです♪誤魔化す為です☆
なるほど!二人は先に優也君の特殊な力について気づいた方が良いかぁ〜!
万能君って設定ですもんね♪
(今までおっちょこちょいなところがあってそうは見えなかったけど 笑
 実言うとこの後もそうだけど・・・。)
とりあえず、今はこのまま話を続けさせて貰いますね♪直すのはまた後ほど・・・。)
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月02日 14:35
もちろんこのまま続けてくださぃ(*´ -`)(´- `*)ネー。
このままのお話で楽しんでますから(´∀`*)

今後直すことがあれば・・・と思って軽い気持ちで書いてますので、気にしないでくださぃ(*´ -`)(´- `*)ネー。(長く書きすぎたかも?とちょっと後悔&反省中(;´Д`A ```すみませんです><)

続きがアップされてるようなので、早速見てきます〜♪
。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ
Posted by まこティ at 2005年09月03日 04:36
いえいえ、すっごく参考になりましたよぅ♪
どんな些細な事でも、それにどんなに長くなっても
全然構いませんしね(σ`・ω・)σ♪

ありがとう御座いま〜す^^
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月03日 10:48
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