2005年09月02日

紫水晶 第四章_思い出の日4

■前回のあらすじ  読み直して見る?

 三人が精進の社に向かっていた頃、

 揚羽は優也のいった通り、そこにいた。

 自分の身に何が起こったのか、訳の分からぬまま

 途方にくれた揚羽の目に飛び込んできたのは

 暗く淀んだ池の色。

 思いつめた揚羽はこの場で自殺を図ろうとする。

 だが、それは駆けつけた三人の手によって阻止された。

 このままじゃ風邪を引いてしまうと、池からあがろうという

 優也の言葉に頷いて、揚羽は彼の後に続こうとした。

 その時・・・!!

その時である。


「きゃ・・・。」


私はいきなりバランスを崩した。

いままで立っていた地面が消えてしまった様に思われた。

そんな馬鹿な、と思うよりも先に私を支えるものが無くなった今、

私は池の奥へと倒れこんだ。


「くっ・・・!!」

優也が予期せぬ力に足をふらつかせた。

それでも何とか体勢を立て直し、私を引っ張り上げようと手に力を込めた。

生徒会長と副会長も、上から手を伸ばした。

だが・・・。


「うわ・・・!!」

優也の体がしずんだ。

彼の足元の地面もまた、消えてしまったのだ。

その拍子に、掴んでいた手が離れてしまった。

手から伝わってきていた力強い感触が消えてしまい、

私はどんどん沈んでいった。


「葉瀬!花西!」

生徒会長と副会長の緊迫した声と、

池に駆け降りる音が上の方から聞こえてきたような気がした。

彼らが伸ばす手は私達に届かない。

水の冷たさ、疲れの溜まった身体。

泳ぐ気力も出せぬまま、私は半ば引きずり込まれる様に沈んでいく。

息苦しさから気が遠くなっていく。

視界がどんどん暗くなっていく。


と、近くで水を切る音が聞こえた。

と、同時に私の体をしっかりと掴む大きな手。 それは、私を抱きかかえるようにして水面へと上がっていった。

遠のく意識の中で、

私はすぐ近くに感じるその温かさを伝えてくれるものに

しっかりとしがみついた。

そうする事で、何か安心出来る気がした。

心なしか周りの水の感触もやわらぎ、息苦しさも軽くなった。

そんな気さえした。

うっすらと目を開け、私は今私の目の前にいる彼を見上げようとした。

だがそれよりも先に、私の体が持ち上げられ、

水面のところで伸ばされていた手に助け出された。


「大丈夫か?」

げほげほ、と咳き込む私を覗き込むようにして、

副会長が心配そうに声をかけた。

私は震えて涙目になっていたが、こくんと頷いて見せた。

そっか、と胸をなでおろした彼は、隣を振り返った。

ちょうど、生徒会長が優也を引っ張り出しているところだった。

助け出された優也は、池の淵にへたり込んでふう、と息をはいた。

そして大きく息を吸い込んで背伸びした後、

水で濡れて目にかかっていた前髪を掻き揚げて笑った。


「こんな寒い日に、寒中水泳する羽目になるなんて思わなかったよ。」

彼のその様子に苦笑しながら、

生徒会長は空を見上げて満足げに息を吐いた。

皆、笑顔だった。

そんな中、私は息を整えながら思う。


 私には私の事を心配してくれる人がいる。助けてくれる人がいる。


それが分かっただけでも

もう人生が180度変わったように、幸せな気持ちになってくる。

自然と笑みがこぼれる。

この日、私は初めて笑った。




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posted by 霧沢美咲 at 09:01| Comment(7) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
また謎が増えた〜(笑)
彼とは誰なのか気になる(*´ -`)(´- `*)ネー。
Posted by まこティ at 2005年09月02日 14:08
っ・・・!!ごめんなさい・・・っ^^;
また、謎を増やしちゃいました!!
えと、勘違いをされていたら困るので
一応確認なんですけれど、この「彼」というのは
新しい登場人物ではありませんので^^
あしからずです☆
優也君に関する事ですよ^^

謎は終章に近付くにつれて一気に解けていくので・・・♪
それまで、どうぞお付き合い下さると嬉しいです♪

Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月02日 14:40
いい感じに進んで来ましたね♪
この場所妖しすぎっす。一波乱ありそうですねo(^∇^)o ワクワク
Posted by てっちゃん at 2005年09月02日 22:25
ふふふ☆良い勘してますねー♪
ええ、めちゃめちゃ妖しいです☆
そして、一波乱ありますよ〜〜♪ふっふっふーw
まだ、先の話ですけどねぃ(気もたせすぎ??)
Posted by 美咲〜てっちゃんさんへ at 2005年09月03日 00:03
(;゚д゚)ァ.... 思いっきり勘違いしてたかも。
優也君も足場なくして溺れたかと思ってました(汗)
「寒中水泳する羽目に・・・」の部分も、水につかったことに対してかと・・・。
勘違い連発だ〜ァィターΣ(ノ∀`)ペチョンッ
ただ単に、読みが浅いだけとか、想像膨らませすぎとか・・・・......(;__)/| ハンセイ。
Posted by まこティ at 2005年09月03日 05:00
えっ?いえ、間違っていませんよ?
優也君も足場をなくして揚羽ちゃんともども池の中に落ちました!
ただ、優也君に関しては溺れていません♪

うーん、どこで「勘違いかも」と感じたんでしょう??
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月03日 10:55
( ̄ω ̄;)エート。
揚羽ちゃんも優也君も泳がず(泳げず?)に溺れてて、2人とも謎の彼(優也君じゃなく)に水面まであげてもらった・・・という勘違いを、最初にしてました、ってことです(;´Д`A ```
これは、謎の彼=優也君です、との説明で解決してますので・・・言葉足らずで申し訳ない><
Posted by まこティ at 2005年09月03日 14:30
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