2005年09月05日

紫水晶 第六章_新たな仲間2

■前回のあらすじ  読み直して見る?

 揚羽の描いた似顔絵を元に、

 竜也と結城は花園学園にやってきていた。

 揚羽の描いた少女がここの制服を着ていたから。

 聞き込みをしようとした二人だが

 女の子達のパワーに圧倒され、すごすごと退散した二人は

 人の良さそうな少女に話を聞いてくれるよう

 頼む事に成功した。




聞き込みに入っていった彼女を待つこと十分。

二人はふと思う。

揚羽が夢で見たという少女は実際にいるのだろうか?

彼女がここ、花園学園の制服を着ていた事は現実的だ。

可能性はゼロではない。

だがもし彼女が存在したとしても、

こんな普通の中学校で生活しているような娘が

本当に関係しているのだろうか?

彼女も揚羽同様、何かに巻き込まれているのか・・・。

一体、何が起きてるというのだ。

彼等は考えるのを止めた。

考えていたって、答えなど出ない。

何も進んでいないうちから何を言ったって始まらない。

そう、進むだけだ。

進めるだけ、前に行くんだ。

考えるのはそれからで充分だ。

そう、彼等なりに意気込んだ時だった。

何やら学園内が急に騒がしくなってきた。


「何だ、一体?」


訝しげに尋ねる竜也に、結城は首を横に振ることしか出来なかった。

二人揃って学園内へと視線を移すと、

校門の方から先ほど秀美と名乗った少女が駆け出して来た。


「あ、早かったね。」


瞬時に顔を整えて結城が言う。

そして、首尾の方はどうだった?と続け様とした彼の顔が凍りつく。

彼女の後ろには先ほど彼らが会った娘の倍はあるであろう女子生徒が・・・。


「な・・・っ。」


思わず絶句する彼等二人の腕に

すっと彼女は自分の腕をそれぞれに絡めて走り出す。


「ち、ちょっと・・・。」


慌てる二人に構わずに、彼女はぐいぐいと彼らを引っ張っていく。

その彼女の力の強さに竜也は眉をひそめる。

彼女の表情からはそんなに力を入れている様には見えないのに、

この引っ張る力は女の子にしては結構強い。

当の彼女は何気ない様子で


「さあ、お兄さん達。逃げるよっ!!」


と走りながら元気に掛け声を上げる。


「に、逃げるって!?」


一体、何をしでかしたのかと目をむく彼等の後ろで、

女子生徒達の黄色い声が近づいてきていた。


「やだー、別に逃げなくてもいいのにぃー。」

「そうよねー。別に男の子でも構わないよねー。

 むしろ大歓迎って感じー?」

「女装してまで私に会いに着てくれるなんて、超感激ぃー。

 それに、さっきの人も一緒みたいだしー。

 ね、私達と遊びましょうよ。」


彼女達の口から飛び出した言葉に彼等二人は我が耳を疑った。


   ・・・・今、何か妙な言葉が聞こえなかったか・・・?


二人は無言で顔を見合わせて、隣を走る彼女の顔をまじまじとみやった。

聞き間違いだろうか。

だが、二人揃ってそんな事はないと思うが。

二人の視線に気づいた彼女は、かわらず笑顔を浮かべている。

が、次に、さぞ俺達はそわそわと落ち着きがなかったのだろう。

彼女の方から口を開いてくれた。

彼女は人差し指を唇の前に立てて、邪気のない様子で笑って言った。


「話は後でね。今はあの娘達から離れないと・・・。

凄い盛り上げってるみたいだし、身の危険、感じない?」


確かに彼女の言う通りだ。

花園学園の女子生徒達は、

先ほどの彼等二人の逃走で火がついてしまったらしい・・・。

今度は逃がしてなるものか、と目が殺気立っている。

一瞬で顔を青くして、彼等も走り出した。

本気を出した彼等に着いてこられるはずもなく、

彼女達は遥か彼方へと消え失せた。

荒い呼吸を整えながら、結城は


「それで?」


と先ほど聞けずじまいだった話の続きを促した。

出来れば聞きたくはなかったが・・・。

彼女はあっけらかんとした表情で,

問題など何一つないといった感じに言い放った。


「お兄さん達は勘違いしてた様だけど、あたし男なの。

 本名は浅田秀美(ひでよし).

 秀美(ひでみ)って書いて秀美(ひでよし)って読むの。

 両親は男でも女でも、

どちらが生まれてもいいようにあらかじめつけた名前なんだって。

あたしはどっちかってゆーと、秀美(ひでみ)ちゃんって呼ばれる方が

好きなんだけどね。」


と彼は肩をすくめ、舌を出した。

心のどこかで予想していた事ではあったが、

こうもはっきりと彼の口から聞いてしまうとショックな話だ。

竜也なんかあまりの衝撃に開いた口がふさがらない。

まあ、彼のそんな顔はそう滅多に見られるものでもないので見ものだが。

秀美は小さい頃からその生まれつきの可愛らしい顔立ちで、

よく女の子に間違えられていたらしい。

また、あまりの可愛らしさに母親にまで

女の子の服を着せられて遊ばれていたと言う話に彼等は同情を覚えるが、

彼は別に苦痛ではないよと笑う。

むしろ、様々な種類がある装飾品を身につけたり、髪の毛をいじったり、

化粧をしたりするのが楽しくて仕方がない、とそう言うのだ。

彼が大きくなってからは母親も女装をさせる事を止め、

父親もそれを禁じたが、

彼はたまにこうして隠れて女装をしているらしい。

何とも言えない話だが、彼は自分の気持ちに素直だ。

だからといってどうこういえるものでもないが、

多分良い奴なんだと思う。


(こういう奴も、いるんだなぁ・・・。)


女の子って鋭い、としみじみ呟いている彼を見ながら、

結城は苦笑する。

人生いろいろって事か、と納得して

まだ衝撃の事実から立ち直れないでいる竜也の肩をぽんぽんと軽く叩く。

彼はまだ不満そうに納得いかないという顔をしていたが、

気を取り直して秀美に向き直った。


「それで、浅田。聞くのが遅くなったけど、

 例の女の子の方はどう、なった?」


あの状態でちゃんと聞けたのだろうかと心配になって尋ねると、



彼はさも残念そうに

秀美(ひでみ)ちゃんって呼んで欲しいなぁとつっ込みをいれながらも、

親指をビッと立て、軽くウィンクしてみせた。


「もっちろん!!聞いてきたわよ。」

「本当に!?」


驚きとうれしさのあまり身を乗り出す二人。

がしかし、そんな二人に彼は少し困ったように肩をすくめながら


「あんまり、いい話じゃないんだけどね・・・。」


と呟いた。

そんな彼の様子に不安を覚えながら二人は聞かずにはいられなかった。

どういう事だ、と。

彼は告げた。

ゆっくりと、そしてはっきりと

この事実を口にした。



「似顔絵の子ね、ここ最近から行方不明なんだって・・・。」





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posted by 霧沢美咲 at 00:03| Comment(2) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
速読は得意なんで5分もせず読んじゃいましたw
 
小説とか自体あまり読まないのですが、
更にファンタジー物限定というと
ダレンジャン位しか読んだ事無くって
あれは主人公の視点でずっと続くので、
久しぶりに読んだこの文章での視点の入れ替わる
テラーチェンジ等の手法は新鮮でしたね。

これだけの長文書き溜めるのは時間が掛かったろうナァと思いましたw
 
 
 
 
もう書き溜めてある物なのかも知れないですけど
アップ頑張ってくださいね(^w^
Posted by ドーラ at 2005年09月05日 10:01
5分・・・ですかっ!?凄いですねっ!
でも・・・早すぎやしませんか?^^;

私はテラーチェンジの手法が好きなんで♪
そういう小説の方が好きだし、
書く時もその手法を好んで使います^^

うーん、この物語は
アイデアは浮かんでからは割かし、スラスラっと書けた方なので
そんなに時間はかかりませんでしたよ☆

ええ、これからもどんどんUPしていきますよ♪
あ、でも この連載が終わったら、
小説のネタが危なげになっちゃうので、時間稼ぎも必要かもぉ・・・(汗)

Posted by 美咲〜ドーラさんへ at 2005年09月05日 16:36
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