2005年09月11日

紫水晶 第八章_再会

■前回のあらすじ  読み直して見る?

 再び夢の中に少女が現れて、揚羽の瞳も元に戻ったようだ。

 だが・・・未だ謎は残っている。

 安藤真由子も何らかの事件に巻き込まれているというのなら

 僕達は、最後まで見届けようと思う。


第八章 再会



彼等は神社にたどり着いた。


神社は前よりも更にさびれたようだ。


この重苦しい空気や寒々とした雰囲気は、


彼等の緊張からくるものなのか、それとも・・・。




「・・・本当に、こんなとこに彼女がいんのかな?」




結城が呟く。


疑いたくなる彼の気持ちも良く分かる。


こんな、いかにも何か出てきそうな不気味な場所に、


少女がたった一人でいるなんて・・・。



竜也はふと隣に立っている揚羽を振り向いた。


以前、人に会いたくないとここに来た彼女。


苦しみのあまり、死のうとした彼女。


彼等が来るのがもう少し遅れていたら、彼女は今ここにはたってはいない。


あの池の奥深くで、


誰にも気づかれぬままきえてしまっていたかもしれなかった。


安藤真由子もそうなのだろうか?


誰とも会いたくなくて、ここに着たのか?


そして・・・彼女もまた死のうとしているのか・・・?



いや、しかし揚羽の話では


彼女はそんなに思いつめていた様子はなかったらしい・・・。


が、今もそうであるとは限らない。


人の心は弱く、うつろいやすいものなのだから・・・。




気を引き締めて、彼等はお堂の方へと足を進めた。


そして、入り口のところで立ち止まりお堂の中に向かって声をかけた。




「こんにちはー。誰かいるかい?」




結城が平静を装った明るい声をかける。


彼女が夢の中みたいにすぐに姿を見せてくれればいいのだが。


返事はなかった。


頭を掻きながら、彼は続ける。




「誰もいないのか?お邪魔しちゃうよ?」




そう言って、戸に手をかけ開けようとする。


が、開かない。


少し力を入れて開けようとすると、


近くの壁や床がギシギシと悲鳴を上げる。


力一杯こじ開けようものなら、一気にお堂自体が崩壊しかねない。




「参ったな・・・。」




皆を振り返り、どう思う?と返答を求めてくる結城に、


竜也は首を振り、ところどころ壊れて穴の開いた壁やガラスの割れた窓を


指差した。


そこには人の手によって故意にふさがれた跡があった。


誰の目にも触れないように・・・。


しかもそれは、ちょいとそこらの力では壊されないよう、


何重にも気の板が打ち込まれていた。


以前はなされていなかったものだ。




(間違いない。ここには人がいる。おそらく安藤真由子が)




彼等は確信した。


しかし、どうしたら出て来てくれるのか。


何かいい考えはないかと考えをめぐらせていた時。


揚羽が足を一歩踏み出した。


そして、普段のおどおどとした喋り方ではなく、


はっきりとした口調で、中にいるであろう彼女に向かって言い放った。




「いるんでしょう、安藤真由子さん?


 私は花西揚羽。


 あなたに目を入れ替えられた者よ。


 今日は、あなたに話しがあって来たの。」




彼女のその言葉に、お堂の中でガタッと物音がした。


それを確認し、彼女はキッと中にいる真由子を見つめ声を荒げる。




「どうして、あなたは私の前に現れたの?


 その瞳は一体何なの!?


 ねぇ、教えてよ。何も話さないで、勝手すぎるよ!!」


彼女のその言葉に竜也は顔をしかめる。




(ちょっと単刀直入すぎやしないか・・・?)




しかも彼女のその言葉には、敵意が込められている。


これじゃぁ、ますます出て来れないんじゃぁ・・・と


間に割って入ろうとした竜也の耳に、



―ミシッー



とお堂のきしむ音が聞こえた。


彼女の言葉は止まらない。




「私が可愛そうだったから!?だから瞳を入れ替えたって!?


 大きなお世話よ。誰にもそんな風に思って欲しくないわ、


 あなたにもね。」




今まで散々溜め込んでいたものを、


思いっきり吐き出そうとしているようだった。


そうする事で、震える思いを必死で堪えるように。



―ミシミシミシッー



お堂がきしむ音が強くなっていく。


今にも崩れるんじゃないかってくらい。



―ミシミシミシミシミシミシミシー



先ほどまで静寂に包まれていた辺りは


怒り狂うように低い唸り声をあげる。


その様子に、彼女も口を閉ざした。


息をのんで、呆然と立ち尽くす。




「ちょっと、このままだとまずいんじゃないの!?」




秀美が緊迫した声を出す。


それを合図に、彼等の体が動く。




「真由子さん?出て来てよ!!」


「このままだと危ないんだ!!」


「今度はそうやっていなくなる気なの!?」


「まだ話したい事が、たくさんあるんだ!!」


「何があったっていうんだよ?頼むから顔を見せてくれよ!!」




せっぱつまった声で戸を叩く。


だが、内側から戸を開ける気配は感じられず、


返答もまだなお返って来ない。


ただひたすら彼女が出てくるよう祈る事しか出来ない自分の無力さに


彼等は唇を噛む。




(お願いだよ。誰かが怪我するところも死ぬところも見たくなんかないよ!)




そんな彼等の思いもむなしく、今お堂が大きく傾いた。


その場にいる誰もが、声にならない悲鳴をあげた。


巻き込まれないよう戸から離れながら彼等は目を伏せた。


・・・その時、竜也は目の端の方で何かが動く気配を感じて顔を上げた。


その彼の目が大きく見開かれる。





彼は見た。


優也の体から何か、透明なものが飛び出すのを・・・。


その透明なものが抜け出すと同時に、


優也の体が大きく揺らいで前のめりに倒れそうになる。


それに気づいた揚羽が、


顔を強張らせて素早い身のこなしで前に立って彼を抱きとめる。


意識がないため、


彼の体重が直接揚羽にのしかかって彼女はよろめき地面に膝をついた。


秀美がかがんで揚羽と優也に、


大丈夫?と声をかけたが優也は動かないままで、


揚羽もそんな彼を心配そうに見つめるばかりだった。


だが、優也の胸元は上下に呼吸を繰り返しているので


少し気を失っているだけなのだろう。


秀美が彼の額に手を当て、熱がない事を確認し、呼吸も穏やかなのを見て、


心配ないよと涙ぐむ揚羽の肩をぽんぽんとたたく。


その間も竜也はさきほどの透明なものを追っていた。


ふわふわと宙を舞う人型の生き物。


彼はそれを以前に見た事があった。




彼が小さかった頃。


そう、あの日、飛行機事故に巻き込まれた時。


優也の体から出てきた彼は、その時見た男の人と何となく似ている気がした。


隣では結城も口をあんぐりと開けて呆然と彼を見つめていた。


彼は軽い足取りでお堂の屋根の方へと飛び移り、


そこに中へと続く穴を見つけると素早くその中に飛び込んだ。


それと同時に、ついにお堂が崩れ落ちた。


すさまじい轟音とともに、大量の木屑や埃が風圧で舞い上がり、


彼等にまで襲いかかる。




(―!!)




目を瞑り、服で鼻や口を覆ってやり過ごそうにも、


そのすさまじさは息が止まるほどの苦しさだ。


それが収まる頃には、辺りはひどい有様だった。


目の前に積まれた瓦礫の山を、


彼等は木屑や埃で汚れた髪や服を払う事もせず、ただじっと見ていた。


その時だ。




「・・・あっ。」




秀美が口を開いた。


彼等が振り向くと、彼は瓦礫の奥の方を指差している。


よく見ると、彼の指差す先から淡く優しげに輝く金色の光が漏れ出していた。




「・・・・・・・・。」




彼等は顔を見合わせる。


皆、額にはうっすらと汗が輝いていた。


再び光に目を移し、目をしばたかせたり、こすったりしている。


目の前の光景が信じられなかったのだ。


ただ一人、竜也を除いて・・・。


彼は足早にその光に近づいていった。


三人は一瞬戸惑ったが意を決して後に続く。


彼等はこれ以上被害が大きくならないよう慎重に瓦礫をどけていった。


光がどんどん強くなっていく。


そして、休む事なく動いていた彼等の手が止まった。


彼等は見つけたのだ、二つの影を。


光が囲むその一箇所だけが、すさまじい崩壊の直撃を免れていた。


一人がもう一人をかばうように両手を広げ覆いかぶさるように立っていた。




「な・・・・っ。」




今度は揚羽も秀美も彼にきづいたらしい・・・。


口をぱくぱくさせて、声にならない言葉を繰り返し呟いている。


更に衝撃は彼等を襲う。


かばうように立った彼の、


その透き通る体の下にうずくまっていたものとは・・・。




「・・・ひっ!!」




揚羽が悲鳴をあげた。


無理もない。竜也も結城も秀美も、

それを見た瞬間、思わず呻いてしまった。


必死で堪えなければ彼等もまた、叫んでいたかも知れなかった。




―彼等が見たものとは・・・。



彼等が考えていた安藤真由子の姿はそこにはなかった。


そこにいたのは醜い化け物。


骨の浮いた黒い肌。


血が滲んだ様な赤黒い長く尖った爪。


白いボサボサの髪。


紫色の唇。


そしてところどころ抜け落ちたボロボロな歯。


だが、その顔にはあのうす紫色に輝く瞳があった。



彼女が出てこれなかった理由が、今分かった。


こんな姿になってしまえば出てこれないのは当然だ。


だが、何でまたこんな事に?


あまりの衝撃に言葉もなく立ち尽くす彼等の前で


彼女は自分の目の前に立っている少年を苦しそうに見つめていた。


その彼女の瞳は涙で濡れていた。


そんな彼女を彼は優しい瞳で見つめ、静かに囁きかけた。




「やっと会えた・・・。ずっと捜してたんだよ?」




そう言って、彼は笑った。


本当にうれしそうに・・・。


次から次へととめどなく溢れる彼女の涙を手で拭い取ってやりながら、


彼は




「泣かなくてもいいんだ。何があったのか・・・話してくれるかい?」




そう言い、彼女の体を静かに抱きしめる。


だが、その伸ばされた手は彼女の体に触れることなく通り過ぎる。


彼は顔をしかめる。




「こんな何もしてやれない、


 君を抱きしめてあげる事すら出来ない僕だけど・・・。」




悔しそうに呟く彼に、彼女は激しく首を横に振った。


触れる事の出来ない彼の腕の中に顔をうずめ嗚咽を漏らす彼女。


その姿は醜い化け物で、声もしゃがれた老婆のようなそれなのに、


その様子は普通の少女のように可愛らしかった。




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posted by 霧沢美咲 at 09:09| Comment(2) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
それを見た瞬間わず呻いてしまった。の部分。
たぶん脱字だと思うんですけど・・・。
揚羽ちゃんが悲鳴をあげた後の文章です。

謎がどんどん解けてきてますね〜。
もう((o(б_б;)o))ドキドキです。
続き読んできます 。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノ
Posted by まこティ at 2005年09月13日 20:44
はうっ!!本当だ!脱字ですね〜。
ええ、これからとんとん拍子で謎が解けていきますよ☆

十一章あたりで完結すると思いますので♪
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月13日 22:55
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