2005年09月12日

紫水晶 第九章_明かされた謎

■前回のあらすじ  読み直して見る?

 彼女、安藤真由子はただ一人、

 精進の社のお堂の中に閉じこもっていた。


 こんな姿になってしまっては、出て来れないのも無理は無い。

 だけど、腕の中に抱かれる彼女は、

 何故か 以前の美しい時の少女のように見えたんだ。


第九章 明かされた謎



「姿を消す前日、私達は初めて会った。学校帰りの時だったわ。


 いきなり頭上から声が聞こえて来たものだから驚いたわ。」




そう、彼女は五人に向き直って話し始めた。


― 一週間前、彼女が失踪したその頃の事をー。




「泣きそうだね。何がそんなに悲しいの?=v




彼女と透明な姿をした彼の言葉が重なった。


それを懐かしむように彼女は笑った。




「そう、それが私達の交わした最初の言葉。」



それに頭を掻き、苦笑を浮かべながら彼も答える。



「まさか、聞こえてるなんて思わなかったからね。


 いつもなら僕が何を呟こうが周りを飛び回ろうが、


 人間は全然僕に気づかない。


 だから何気なく口にした後、

 真由子がこっちをまじまじと見るもんだから驚いたよ。

 僕の姿が見えるのか・・・ってね。」




そして、彼はいったん言葉を切り、竜也達に目をやり言ってくる。



「君達にも見えてるみたいだけどね。」


「まぁ・・・、透けてるけど・・・。」



戸惑いがちに答える秀美に



「人間じゃないもの。俗に言う精霊ってやつだよ。


 名前はエリウッド。


 たいていは人間の目には僕達の姿は映らない。


 僕達の方もあまりこっちに顔を出さないし、


 それに人間の方も僕達みたいな存在を信じてる人は少ないし・・・ね。


 でも、君達は違うみたいだ。どうぞ、よろしく。」




と彼は手を差し伸べ握手を求める仕草をする。


それにますます困惑し、


何がどうなっているのか訳が分からないといった様子で


目を白黒させる秀美に、彼は屈託なく笑った。




「やっぱり驚くよね。真由子は全然驚かなかったけど。」



その言葉に、彼女は首を横に振った。



「全然驚かなかったといったら嘘になる。


 けど、私はあなたのその普通に接してくれる態度がうれしかったの。


 今まで私に本気で接してくれた人は誰一人といなかったわ。


 ただ周りで騒ぎ立てるだけ・・・。


 何だか凄くよそよそしいのよ、私に。」



それが少し寂しかった、そう彼女は呟きうつむく。


それを見て揚羽は思った。


それは彼女が綺麗すぎるからだ、と。


薄く透き通るような白い肌。


腰まで伸びるさらさらの髪。


細くしなやかに伸びる身体、指先。


前に一度、夢の中で見た彼女の姿を思い出す。


この世のものとは思えない、天使のように美しかった彼女。


そんな彼女に、周りの人々は、


自分自身の憧れの理想の存在を重ねていたのかもしれない。


そのイメージを壊したくないから。


もしくは、今の関係が崩れるのが怖いから。


だから皆、彼女と話すときには距離をおく。


その距離の遠く寂しく感じられるその思いは、今の私には良く分かる。




「でも、エリウッドと話してる時、凄く楽しかったの。


 ほんの家に帰る十五分程度の間だったけど、


 その間のやり取りの一つ一つが新鮮で・・・、


 いつまでもそうして話していたかった。


 別れる時、本当は苦しくてたまらなかった。


 家に帰ってからも、ずっとあなたの事を考えていたわ・・・。」




悲しげに、彼女は呟いた。


エリウッドは彼女のその言葉に驚いたように、


無言で目を見開き彼女を見ていた。


そんな彼から目を逸らし、真由子は俯きながらゆっくりと続ける。




「次の日、私達また同じ場所で会おうって約束したでしょう?


 その時、私行かなかった。


 悪いと思ったけど、その時はどうしたらいいのか分からなかったの。


 こんな気持ちになるのなんて初めてだったし・・・。


 考える時間が欲しくて、私ここに来たの。


 小さい頃から、何か考え事がある時は


 いつもここにきて考え事をしてたから・・・。」


そこで彼女はいったん話を止め、林の奥の方へと目をやった。




「どうか、したか・・・?」



同じように目をやり、竜也は彼女に声をかける。



「・・・この奥に池があるのを、知ってる?」


「ああ・・・。」



秀美と気を失ったままの優也を除く四人が思い出したように頷く。


以前に揚羽を捜していた時にみつけたあの池の事だ。



「それが?」



不思議そうに尋ねる彼等に、


彼女は顔を恐怖に歪め、怯えた声をあげた。



「声がしたのよ、女の人の声が!!」


「え・・・。」



秀美の顔がその言葉を聞いた途端に、真っ青になる。



「そもそもその女の人が、この目の根源なのよっ!!


 私がここに来て考え事をしてたら、いきなり天気が悪くなったの。


 雲が厚くなってきて雨が降ってきたわ。


 そして雨はどんどん強くなってついには雷までが雲の間を駆け巡ってた。


 今まであんなに天気が良かったのによ!?


 私、凄い気味が悪くなって帰ろうと思った。


 その時よ。池の方から声が聞こえてきたのは・・・。」




ホラー話は苦手なのよぅ、と涙ぐみ耳を塞ぐ秀美を無視して彼女は続ける。


竜也はごくっと息をのんだ。


今まさにこれまでの出来事の謎が解かれようとしているのだ。




「それで・・・?」



身を乗り出して尋ねた竜也の顔を、冷たい風がつたった。


かと思うと、いきなり辺りが暗くなって静かに雨が降り出した。



「な・・・っ。」


「嘘、あんなに天気が良かったのに・・・。」



今や雲の間には雷が駆け巡り、風も強さを増していた。



「これ、避難した方が良くないか?」


「避難っていったって、どこに?」



お堂が壊れた今、この神社には何もない。


木の陰で雨をしのごうにも、


その木もこの台風みたいな天候によって激しく揺れ動き、


決して安全とはいえない状態である。


今にも折れるか倒れるかしそうなそのしなり具合に不安は募る。



「ねぇ・・・。」



秀美が強張った顔で呟く。



「これって、今彼女が言った状況と同じ・・・だよね?」


「!!」


「真由子、その日もこんな感じだったのかい?」



振り返って尋ねるエリウッドに彼女は答えなかった。


じっと下を向いたまま動かない。



「・・・真由子?」



異変を感じて彼女の前にかがみこむようにして尋ねると、


彼女の口から噛み殺した呻き声が漏れていた。



「どうしたんだよ、苦しいのか!?」



慌てるエリウッドの問いかけにも、


聞こえているのかいないのか、


彼女は両手で自分の体を抱えるようにして抱き、


苦しそうにあえぎ続けている。


体中は汗で濡れているし、


抱える指は体に深く食い込むほど強く力が込められている。


何かが、彼女の身に影響を及ぼしているのか。


彼女に目をやり、竜也ははやる気持ちを抑え、冷静に考えようとする。




「ちょっと待って。」



今までずっと黙っていた揚羽が、口を開いた。



「ね、何か聞こえない?」



揚羽ちゃんまで怖い事言わないでよぅ、


とうずくまる秀美をまたまた無視して、彼等は耳をすませる。




―ちゃぽん・・・。




(水音・・・?)




皆が聞こえたというように顔を見合わせる。結構近い。



「あの池だ。」



もしかして、彼女の言う女の人が現れたのだろうか。



「行くのか?」



結城の声に竜也は、はっと立ち止まる。


いつのまにか、池の方へと足を進めていたらしい・・・。


尋常ではない寒気がする。


かすれる声を絞り出し



「ああ、その方が早いだろ。その女の人に聞いた方が・・・。


 彼女が根源らしいしさ。」



わざと明るく答える。


不安をまぎらわせるように。



「大丈夫・・・だよね?」



静かに、ぽつりと呟き見上げてくる揚羽に頷く。


今までずっと真由子の肩を揺さぶっていたエリウッドが


ゆっくりと立ち上がった。



「それに、それが必要かもね。


 真由子のこの苦しみ方。彼女に何か関係があるのに間違いはなさそうだ。」



押し殺した声で呟く。


その彼の目は怒りに満ちていた。


今まで散々彼女を苦しめてきた根源の女。


そしてまだ今もなおそれを続けようと言うのか。


何が目的でこんな事をするのか。


たとえ、どんな理由があろうとも、許す事は出来ないと彼は考えていた。


彼もまた、出会った時から彼女の事が好きだったのかもしれない。


気づかないうちに、彼女に惹かれていたのかもしれない。


このように彼女が苦しむ姿を見ているうちに、


どんどん腹立たしい気持ちが湧き上がってきて、


そして怒りがあらわになる。


しかし、その一番の怒りは自分自身に対する怒り。


彼女の気持ちに気づいてやれず、


こうして苦しめてしまう結果に繋がらせてしまった


どうしようもない自分自身。


隠れた根源。


(ごめんね、真由子。でも、もう二度と苦しめるような事はしないから。)


彼の瞳に決意が宿る。


(だから、もう一度笑って。)


そう、心から祈った。


その時だ。


池の方から女の人の声が聞こえてきたのは・・。




「愚かな・・・。」


「!!」




皆の体がビクッと強張る。


一同が顔を見合わせる。


幻聴なんかではない。


誰もいないはずの池から、確かにその声は聞こえてきた。




ごくりー




誰かがつばを飲み込む音が聞こえた。


その場の全員のものだろうか。


それぐらい、その場ははりさけそうなぐらい緊張していた。


が、次の女の言葉に彼等は我が耳を疑った。




「何故お前は人間なんぞを助けようとする?エリウッド。」




一斉にエリウッドへと視線が集まる。


彼は何か思い当たる事があるのか、


信じられないといった様子で目を見開いていた。




「・・・母さん?」




その彼の呟きを聞くや否や、


池の奥の方から黒い影が浮かび上がってきて、


そして水しぶきを跳ね上げ影はその姿をあらわにした。


二十歳そこらの女性だった。


彼女の纏うその雰囲気はどこかエリウッドに似ていた。


親子に間違いはなさそうだ。


彼女の顔は憎悪に満ちていた。




「そんな・・・、母さん、もうずいぶん前に死んだんじゃ・・・。」



呆然と呟く彼に、女はふんと鼻を鳴らして言い放った。



「そうだよ。けどね、


 あの人を殺した憎い人間どもに何もせずにいるなんて堪えられないからね。


 こうしてここにとどまって、少し懲らしめてやろうと思ったのさ。」



そして女は真由子に目をやり可笑しそうに笑った。



「その女にも呪いをかけてやった。


 思いが伝わらない呪いだよ。


 どうやらその女には好きな男がいるようだったからね。


 どんなに思い続けようが、その願いはかなわない。


 そう・・・、私のようにね。」



そう呟いた彼女の表情に悲しみの色が滲んでいた。


が、すぐにそれは一変して人を嘲るように彼女は言う。



「でも、その姿からすると、一度その呪いを解いたようだね。


 たいしたものじゃないか。


 でも残念だ。逆効果さ。


 万が一の場合に備えて、呪いが解かれた時点でそのものの姿を変え、


 衰えさせていくようにしてるからね。


 その様子だともうそろそろでこときれる頃じゃないのかい?


 あははははははっ。」




女は顔を歪め、高笑いをする。


水面がそれによって波立ち、空気が振動し、辺りの木々もざわめきたつ。


女から来る圧力に無意識のうちに体が震え出す。


歯も小刻みに震え出し、彼等は硬直していた。



(怖い・・・!!)



心の底からそう思った。


足がすくんだ。


早くここから逃げ出したい。


そう思うものの、体は一向に動かない。


エリウッドもまた、下を向いて小刻みに震えていた。


恐怖からではない。


悲しみと怒りからだ。


彼はキッと顔を上げ、女につかみかかるような勢いで怒鳴った。




「止めてよ、こんな事!!母さんらしくないよ!!」



彼のその様子に、女は一瞬口を閉ざしたが、すぐに言い返す。



「うるさい!!人間が飛行機事故を起こさなきゃ、


 あの人は死なずにすんだんだ!!」



ピクッー



その女の言葉を聞いた途端、竜也の顔色が変わった。


(飛行機事故って・・・もしかしてあの時の・・?)




彼は彼が五歳の頃の事を思い出す。


sasie3.jpg

↑は友達が描いてくれた挿絵です☆ありがとーw




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posted by 霧沢美咲 at 10:10| Comment(4) | TrackBack(0) | ファンタジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「どぞ、よろしく」エリウッドの言葉。
脱字かな?脱字じゃないなら、ちょっと違和感がありました。

@木の陰にで雨をしのごうにも
A彼もまた、出会った時からい彼女の事が好きだったのかもしれない。
一文字多い気がw

謎に迫ってきてて、ドキドキ感が.。゚+.d(´∀`*)。+.゚ イイ!!
うちのブログペットが「わん☆ダッフルは『揚羽』ばっかり言ってるよ」と・・・ペットにもお話が伝わってるようです♪
Posted by at 2005年09月13日 21:24
ううっ・・・誤字脱字多くってすみませんっ・・・。
早速直しますぅ〜。

でも、良かった〜!
もしつまんなくて、ドキドキヒヤヒヤ感がなかったら・・・っと思ったけど
ドキドキして貰えてるようで♪

って!そうなんですか!?
そちらのブログペットさんに
お話が伝わってると☆それは凄い(笑)
わん☆ダッフル君は揚羽さんLove♪みたいですからね(笑)
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月13日 23:13
(;゚д゚)ァ.... 昨日のコメント、名前が抜けてましたね^^;またやってしまった・・・すみませんです><
Posted by まこティ at 2005年09月14日 19:24
あ、やっぱりまこティさんでしたか♪
へへっ、当たった〜☆
これ、一旦登録した記録が持続して残れば便利なんですけど・・・ね。 
そういう設定出来ないものかなぁ(汗)
Posted by 美咲〜まこティさんへ at 2005年09月14日 20:55
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